「どうやるか(How)」を考える時間で、あなたはすでに疲れていませんか?
完璧にこなしたい、ミスは避けたい。そんな真面目さゆえに、“全部自分でやらなきゃ”と思い込んでしまう女性リーダーは少なくありません。
でも本当に大事なのは、「どうやるか」ではなく、「誰とやるか」。
これは、世界的ベストセラー『Who Not How』に書かれた、新しいリーダーシップの考え方です。
この記事では、なぜ私たちはHowにこだわってしまうのかを明らかにしながら、「Whoを信じること」がリーダーとしての進化になる理由を、EOSの視点から深掘りしていきます。
なぜ女性リーダーは「How」にこだわってしまうのか?
責任感が強く、真面目で、周囲への気配りも忘れない。
そんな優秀な女性リーダーほど、「全部自分でやる方が早い」「任せて失敗したら自分の責任」と考えがちです。
真面目・完璧主義・責任感の強さ
日本の職場で評価されやすい「完璧主義」や「責任感の強さ」は、女性リーダーにとって両刃の剣。
任せるよりも自分でやった方が安心という思いが、リーダーとしての成長を妨げてしまうこともあります。
「自分でやった方が早い」思考
教える時間をかけるより、自分でやった方が早い。
そうして業務を抱え込むうちに、周囲の成長機会を奪ってしまうケースも少なくありません。
結果的に、チーム全体の成長を止めてしまうことにもつながります。
失敗を恐れて手放せない
任せた結果、期待通りに進まなかったときの不安やリスクを考えると、つい「やっぱり自分でやろう」となってしまう。
このように、「How思考」は心理的安全を求めるがゆえの“防衛反応”でもあるのです。
しかし、Howにこだわるあまり、「時間が足りない」「本来やるべき役割に集中できない」といった慢性的なリーダー不全が起きていきます。
次の章では、『Who Not How』という新しい視点が、なぜこの状況を変える鍵になるのかを見ていきましょう。
『Who Not How』の考え方とは?
『Who Not How(フー・ノット・ハウ)』は、Dan Sullivan(ダン・サリヴァン)とBenjamin Hardy(ベンジャミン・ハーディ)の共著による書籍です。
本書の主張はシンプルですが本質的です。それは、「どうやるか(How)」を考えるのではなく、「誰とやるか(Who)」を考えることで、時間・エネルギー・成果が一気に変わるというもの。
「どうやるか」ではなく「誰とやるか」
あなたが新しいプロジェクトを任されたとき、まず「どう進めよう」と考えた経験はありませんか?
しかしこの思考は、自分のリソースに限界をつくってしまいます。
『Who Not How』では、「その業務をもっと上手く・早く・効率的にできる“Who”は誰か?」を最初に考えることがリーダーの仕事だとされています。
「任せること=成長戦略」
任せることは、単なる“手放し”ではなく、チームと自分をともに成長させる戦略的な選択です。
以下は、How思考とWho思考の違いを表にまとめたものです。
項目 | How思考 | Who思考 |
---|---|---|
スタートの問い | どうやってやるか? | 誰とやるか? |
リソース | 自分一人の時間・能力 | 他者の強み・経験 |
目的 | タスクを完了させる | 成果を最大化する |
チームへの影響 | 属人的・育たない | 育成・信頼が生まれる |
リーダーの役割 | プレイヤー寄り | 戦略的に任せる |
「全部自分でやる」ことは一見努力の証のように見えますが、それは長期的には組織の成長を妨げるブレーキ自分より得意な“Who”に任せることが、真の意味でのリーダーシップだと『Who Not How』は語っています。
次は、「誰でもいいわけじゃない」――“正しいWho”をどう見極めるかについて掘り下げていきます。
“正しいWho”を見極める|リーダーとしての進化への第一歩
『Who Not How』は、「任せること」を推奨していますが、それは「誰でもいい」という意味ではありません。
任せるべきは、目的に合った“正しいWho”。つまり、自分よりその分野で優れている人に、信じて託すという視点が欠かせません。
「この人に頼んでも大丈夫だろうか?」という迷いをなくすには、EOSが提唱するいくつかのツールが役立ちます。
GWCで“任せるべき人”を見極める
EOSでは、人材の適正を判断するためにGWCというシンプルなフレームを用います。
G(Get it)=業務や役割を理解しているか?
W(Want it)=自らその役割をやりたいと思っているか?
C(Capacity to do it)=その業務を遂行できる能力・時間があるか?
この3つがそろっている人こそが、信じて任せられる“正しいWho”。
一方で、GWCのいずれかが欠けている人に任せると、結果的にフォローに時間を取られ、自分がHow思考に引き戻されてしまいます。
アカウンタビリティチャートで「任せる構造」をつくる
誰に任せるかを考える前に大切なのが、「そもそも何を誰が担うべきか」を構造として明確にすることです。
EOSでは、役職名ではなく「責任を持つ役割」ベースで作成された図を「アカウンタビリティチャート」と呼びます。
役割を明確に定義し、それぞれに最適なWhoを配置することで、「誰に任せるか」が自然と見えてきます。
逆に、構造が曖昧なままでは、属人化や「結局誰がやるの?」という混乱が生まれ、Howに逆戻りしてしまいます。
LMAの視点で“任せっぱなし”を防ぐ
任せたあとは放置…では、リーダーシップとして不十分です。
EOSでは、人を動かすポジションに就くすべての人が、「LMA」の責任を持つと定義しています。
L(Lead)=導く
M(Manage)=管理する
A(hold Accountable)=責任を課す
このLMAの実践により、「任せたら終わり」ではなく、正しく任せて、必要な支援を続け、成果に責任を持たせるというリーダーの役割を全うできます。
Whoを見極めて任せることは、単なる“楽をする手段”ではなく、チームの可能性を引き出し、全体の成果を最大化するための戦略なのです。
▶「責任を課す」と「問う」の本質的な違い|LMAで部下を育てる
今日から実践できる『Who』思考へのシフト
『Who Not How』の考え方は、特別な才能がなくても今すぐ取り入れることができます。
重要なのは、“思考の癖”を変えること。HowではなくWhoを起点に考える習慣を身につけましょう。
「これは誰に任せられるか?」と自問する

新しい業務が発生したとき、つい「どうやって進めよう」と考えていませんか?
その瞬間に立ち止まり、「これは私がやるべきか?それとも他の誰かがやった方が良いか?」と問いを変えることが、Who思考の第一歩です。
「これは誰の得意分野?」「この人ならもっと早く、質高くできるかも」
そんな風に、他者の強みを活かす視点で考えてみてください。
石(Rocks)の設定時にも「Who」を意識
EOSでは四半期ごとの最重要目標を「石 Rocks(ロック)」として設定しますが、その目標を達成するのに最適な「Who」が誰なのかを最初に明確にしておくことが重要です。
リーダー自身が全部を背負うのではなく、「この石(Rocks)は〇〇さんがGWCを満たしているから任せよう」と構造的に判断することで、組織はスムーズに動き始めます。
▶仕事の優先順位はどう決める?|EOSで学ぶ「石(Rocks)」に集中するリーダーの判断軸
チーム内で「頼る文化」を育てる
「任せることは悪」「頼ることは甘え」――そんな無意識の思い込みを手放すことが、Who思考には欠かせません。
リーダーが「〇〇さんに任せて本当に助かった」と“頼ったこと”をポジティブに共有することで、チームにも「信じて任せていいんだ」という空気が生まれます。
責任感の強い女性リーダーにとって、誰かに頼ることは勇気のいる選択かもしれません。
でも、それは弱さではなく“成熟したリーダー”の証
今日から、「Howではなく、Whoから考える」視点で、リーダーとしての進化を始めてみませんか?
まとめ|「Who」を信じることが、リーダーとしての進化になる
責任感が強く、丁寧に仕事をこなしてきた女性リーダーほど、「どうやるか(How)」にこだわりがちです。
しかし、成果を最大化し、チームを育てていくために必要なのは、「誰とやるか(Who)」という発想です。
『Who Not How』は、任せることを“手抜き”ではなく“戦略”として捉える考え方を教えてくれます。
GWC、アカウンタビリティチャート、LMAなどのEOSツールを活用することで、自分よりその役割に適した人を見極め、信じて託すことが可能になります。
自分ひとりの力にこだわるのではなく、「Whoの力」を活かして進化するリーダーへ。
それこそが、次のステージを切り開く女性リーダーのあり方ではないでしょうか。
書籍紹介|『Who Not How(フー・ノット・ハウ)』とは?
『Who Not How(フー・ノット・ハウ)』は、Dan Sullivan(ダン・サリヴァン)とBenjamin Hardy(ベンジャミン・ハーディ)によって書かれた、思考と成果の転換を促す自己啓発・ビジネス書です。
本書の主題は、タイトルの通り、「どうやるか(How)」ではなく「誰とやるか(Who)」という視点で考えること。
特にビジネスリーダーや起業家に向けて、「自分一人で抱え込む」限界から脱し、成果を最大化するために“適切なWho”を見極める重要性が語られています。
女性リーダーにとっても、責任感や完璧主義からくる「全部自分でやる」思考から解放されるヒントが詰まっています。
任せることは甘えではなく、戦略的選択であり、リーダーとしての進化である――このメッセージは、多くの共感を呼ぶはずです。
「自分で頑張る」を手放し、「誰と一緒に取り組むか」を問い直したいすべてのリーダーにおすすめの一冊です。