数字の目標があっても、「達成できなくても特に何も起きない」――そんなチーム文化、心当たりはありませんか?
実は、これがチーム全体の機能不全やモチベーション低下の引き金になることもあります。
「なんとなく未達」「次回がんばればいい」
この“なんとなく”の放置が積み重なると、やがてチームだけでなく会社全体の目標もズレていくのです。
スコアカードとは?|“数字で見る”という習慣
スコアカードは、EOS(起業家型組織運営システム)で使われる週次管理ツールです。
チームの重要指標(KPI)を5〜15個に絞り込み、毎週その進捗をチェックします。数字で「うまくいっている/いない」が一目でわかる仕組みです。
ポイントは、「未来の予兆が見える」こと。
売上などの結果ではなく、そこに至る“先行指標”を可視化することで、トラブルを未然に防げるだけでなく、未来を変えることもできるのです。
先行指標と遅行指標、どちらも必要
EOSで重視されるスコアカードは、本来「先行指標」で構成されることが理想です。
先行指標とは、“未来の成果をつくる行動”が数値化されたもので、たとえば「面談回数」「来店予約数」「商品準備数」などが該当します。
先行指標を定点観測することで、「今の行動が未来にどうつながるか」が見えてきます。これがスコアカードの強みです。
比較項目 | 先行指標 | 遅行指標 |
---|---|---|
定義 | 未来の成果を予測する行動の数値 | 過去の成果として現れる結果の数値 |
例 | 問い合わせ件数、アポ数、作業完了数 | 売上高、利益率、顧客満足度 |
目的 | 将来の成果をつくる | 現在までの結果を評価する |
役割 | 問題の早期発見・予防 | 成果の把握と振り返り |
対応のタイミング | 事前に行動を変える | 結果を見て対策を立てる |
一方で、会社としては「売上」「利益率」「在庫回転」など、成果としての“遅行指標”の管理も当然重要です。
これらは結果を示す数字であり、目標未達は「何かがすでにうまくいっていない」ことのサインでもあります。
だからこそ、遅行指標が未達であっても「そのままにしない」ことが大切です。
遅行指標の“ズレ”は、IDS(Identify・Discuss・Solve)で原因を見極め、チームとして改善アクションを起こすべき課題なのです。
“未達”あるあると、なぜ危険なのか
「未達でも怒られないから放置」
毎週スコアカードに数字が記録されても、「誰も指摘しないし、別に怒られないから…」とスルーしてしまう。
そんな空気がチーム内にあると、未達が常態化してしまいます。
これは、数字が「目標」ではなく「参考値」に変わってしまう瞬間です。
行動の指針としての意味を失い、やがてチーム全体のやる気や責任感も薄れていきます。
「なんとなく下がってるけど、また上がるでしょ」
一時的な未達を「波のようなもの」「そのうち戻る」と思い込んで、深く見ないまま次週へ流してしまうこともあります。
特に根拠のない“楽観”は、問題の本質を見逃す原因になります。
「気づいたときにはもう手遅れだった」という状況を防ぐためにも、
数字の変化には理由があると考え、必ず一度立ち止まって見直す習慣が必要です。
「数字を見るのが怖いからスルー」
真面目で責任感の強い人ほど、「見たくない」「できていない自分を認めたくない」と感じ、数字から目を背けてしまうことがあります。
しかし、数字はあなたを責めるためではなく、行動を正すためのヒントです。
怖さの裏には改善のチャンスが隠れています。チームの誰かがその感情に気づき、サポートする姿勢も大切です。
「未達が当たり前になっている」
最も深刻なのは、未達が繰り返されるうちに、チームの中で「未達が当たり前」になってしまう状態です。
スコアカードが赤くても、誰も気に留めず、心も痛まない、責任も感じない――そんな状態は、チームの感度が鈍り、改善行動が起きにくくなります。
“あってもなくても同じ数字”になってしまう前に、一つひとつの数字が意味を持つよう、共通認識と行動の文化を育てる必要があります。
こうした“あるある”は、一見大きな問題に見えませんが、徐々に組織の危機を招きます。
未達を放置しないためのEOSの考え方
スコアカードはただのチェックリストではありません。
チームで決めた“数字”であり、“約束”であり、“責任”でもあるのです。
EOSではこの考え方を明文化しており、スコアカードは「チームが成果に責任を持つための透明な仕組み」として位置づけられています。
“What gets measured gets done.”
(測定されるものが実行される)
“Numbers create accountability.”
(数字は責任を生む)
曖昧な感覚ではなく、数字で「できている」「できていない」を共有することが、チームを前進させる鍵になります。
数字の目標があっても、「達成できなくても特に何も起きない」――そんなチーム文化、心当たりはありませんか?
実は、これがチーム全体の機能不全やモチベーション低下の引き金になることもあります。
スコアカード未達=課題リストに追加
EOSでは「未達は課題である」と明確に定義されています。
スコアカードの項目が達成されていなければ、それは組織のどこかが機能していないサイン。
見て見ぬふりをするのではなく、まずは課題リスト(Issues List)に追加します。
「なんとなく未達」「次回がんばればいい」
この“なんとなく”の放置が積み重なると、やがてチームだけでなく会社全体の目標もズレていくのです。
記録され、可視化されることで、未達が「共有されたチーム課題」として扱われるようになります。
“あってもなくても同じ数字”になってしまう前に、一つひとつの数字が意味を持つよう、共通認識と行動の文化を育てる必要があります。
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課題リストが育てる|女性リーダーの考える力
L10ミーティング(10点満点ミーティング)でIDSにかける
未達となった項目は、週次のL10ミーティングで優先順位をつけて取り上げます。
このとき活用するのがEOSの課題解決トラック「IDS(Identify・Discuss・Solve)」です。
事実をもとに、何が本質的な原因なのかを明らかにし、建設的な議論のもと、最適な打ち手をその場で決定します。
▶課題を深堀する「IDS(Identify・Discuss・Solve)」の関連記事
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ToDoにして、翌週の改善に直結させる
決まった解決策は、明確なアクションとして「ToDo化」します。
EOSではこのToDoを翌週のL10ミーティングで確実に確認するルールがあるため、実行責任が明確になり、対処が“やりっぱなし”になりません。
スコアカード→課題→IDS→ToDoという一連の流れが、チームの自律的な改善サイクルを生み出します。
スコアカード未達は「怒るための材料」ではありません。
チームを機能させるために、“今すぐ手を打つ”ための気づきツールなのです。
まとめ|“赤信号”を見逃さない女性リーダーになる

先行指標であれ、遅行指標であれ、スコアカードの項目は「チームで決めた“約束”の数字」。
その未達を見過ごすことは、行動のズレを見逃し、責任の共有を放棄することにつながります。
女性リーダーは“数字に向き合う文化”を育てる存在。
「未達を放置しない」ことこそ、女性リーダーとしての第一歩なのです。