リーダーとして仕事をしていると、「なんとなくこうだろう」と感覚で判断する場面は少なくありません。現場の空気や人の変化を察知できることは大切ですが、感覚だけでは相手を動かすのに時間がかかることもあります。数字の裏付けがなければ、意見が「なんとなくそう思う」に聞こえてしまい、説得が難しくなるのです。
感覚だけで判断していると、相手によって受け取り方が変わったり、議論が堂々巡りになることがあります。特に週次ミーティングや四半期ごとの会議、年間の振り返り会議などでは、限られた時間で課題を特定し、解決策を決めなければなりません。その場で「根拠のある話」ができるかどうかは、会議の質や決定スピードを大きく左右します。
では、どうすれば感覚を活かしつつ、説得力を高められるのでしょうか。答えのひとつが、EOS(起業家型組織運営システム)のツール「スコアカード」です。数字を根拠に話せるようになると、説得力がぐんと増し、チーム全体の動きもスムーズになります。
感覚だけでは通じない。数字で課題を語る力をつける

「多分こうだと思う」「感覚的に違和感がある」——こうした言葉は、リーダーとしての経験や観察力からくる大切な判断材料です。しかし、それだけでは根拠が不十分で、相手を動かすまでに時間がかかってしまいます。数字という裏付けがあれば、わずかな時間でも説得力を持って意見を伝えられ、組織の意思決定が加速します。
スコアカードとは?
EOSにおけるスコアカードは、組織の健康状態や進捗を毎週同じ項目で測定する仕組みです。特に「先行指標」に注目します。先行指標とは、将来の結果を予測できる数字のこと。例えば、商談件数や面接数、顧客からの問い合わせ件数などです。これらは結果が出る前に変化を察知でき、早めの対策につながります。
スコアカードが課題を明確化する理由
1. 同じ数字を追い続ける
毎週同じ項目を測定することで、小さな変化や傾向に気づきやすくなります。感覚だけでは見逃す変化も、数字にすれば明確です。
2. 先行指標で未来を予測する
遅行指標(売上や利益など)は結果が出てからしか判断できません。一方、先行指標は未来の結果を予測でき、早めに手を打つことができます。
3. 課題の特定と議論がスムーズになる
数字が課題を事実として示すため、議論の焦点がぶれません。感覚による意見の食い違いも減ります。
スコアカードの有無で変わる4つの違い
スコアカードの有無で、課題発見の速さや会議の進行、チームの足並みまで大きく変わります。下の表でその違いを比較してみましょう。
項目 | スコアカードがない場合 | スコアカードがある場合 |
---|---|---|
課題発見のタイミング | 問題が起きてから気づく(手遅れになることも) | 先行指標で変化を察知し、早期に対応できる |
会議の進行 | 意見が感覚や経験に頼り、焦点がぶれやすい | 事実に基づくため議論が短縮され、焦点が明確になる |
チームの認識 | 人によって判断基準が異なり、足並みが揃わない | 共通の数字を基準に全員が同じ方向を向ける |
感覚の補強 | 感覚の裏付けがなく、説得に時間がかかる | 感覚を数字で裏付け、自信を持って話せる |
まとめ:女性リーダーにこそ数字を味方にしてほしい理由
女性リーダーは感覚や人間関係への配慮が得意ですが、その強みを最大限に活かすには数字が必要です。数字は人を冷たく扱うためのものではなく、全員を同じ土台に立たせるためのツールです。
数字を根拠にすることで、説得力と自信が増し、会議のスピードも向上します。感覚と数字、この二つのバランスこそが、リーダーとしての影響力を高めます。
感覚と数字、この二つをバランス良く使える女性リーダーは強い存在です。次の会議では、ぜひ数字を根拠に課題を提示してみてください。説得力とスピードが、きっと変わります。
書籍紹介|『TRACTION』とは?
本記事で紹介したスコアカードは、EOS(起業家型組織運営システム)の公式ガイドブック『TRACTION』で詳しく解説されています。著者ジーノ・ウィックマンは、企業が成果を出すためには「感覚や勘だけに頼らず、数字という事実で組織を動かすこと」が不可欠だと述べています。
特にスコアカードの章では、毎週同じ先行指標を追いかけることで、課題を早期に発見し、的確な対応ができるようになる仕組みが紹介されています。これは、結果が出るのを待つのではなく、数字を通じて未来をコントロールするための強力なツールです。
EOSの全体像や、スコアカード以外の実践的ツールにも興味がある方は、『TRACTION』を手に取ってみてください。数字と仕組みを味方につけることで、感覚と事実のバランスが取れた、より強いリーダーシップを発揮できるようになります。
▶『TRACTION』ビジネスの手綱を握りなおす 中小企業のシンプルイノベーション
ジーノ・ウィックマン 著