「日々の業務に追われて、気づけば本当に大事なことが後回しになっている」──そんな経験はありませんか?リーダーとして細部に気づくことは強みです。しかし、目の前の業務ばかりに集中しすぎると、会社やチーム全体の方向性を見失ってしまいます。これを表す言葉が「木を見て森を見ず」です。部分に囚われすぎて全体を見失うことは、まさにリーダーが陥りやすい落とし穴といえます。
なぜ女性リーダーは「木」を見すぎてしまうのか
細部に気づけるのは大きな強み
女性リーダーはチームメンバーの状況や現場の細部に気づきやすい特性を持っています。これは大きな強みです。しかし、一方で細かい業務に囚われすぎると、全体視点を見失うリスクにつながります。
やり終える達成感が木に集中させる
女性リーダーは目の前の仕事を「やり終える」「完遂させる」ことで得られる達成感を好む傾向があります。チェックリストに印をつけたり、案件を片づけたりすると気持ちがすっきりします。その一方で、その感覚に引っ張られすぎると日々の細かな業務を優先しがちです。結果として「木」ばかりを見て「森=チームや組織全体の方向性」を見失いやすくなります。
通常業務に追われると森を見失う
毎日の資料作成や会議準備、メール対応や突発的な依頼処理などに追われていると、気づけば「今日やることを片付けるだけ」で一日が終わってしまいます。その状態が続くと、本来リーダーに求められる「チームを未来やビジョンに導く視点」が弱まってしまいます。そのため、全体を見渡す仕組みが必要です。
「木を見て森を見ず」に陥る典型例
「木を見て森を見ず」に陥る典型例としては、たとえば次のようなものがあります。
- 売上が一時的に落ちたからといって、慌てて商品やサービスの方針をすぐ変えてしまう。
- ちょっとしたクレーム対応に追われるあまり、本来進めるべき重要プロジェクトが止まってしまう。
- 毎日のメールや会議の調整に手を取られ、長期的な育成やチームづくりがおろそかになる。
こうした行動は「目の前の木」に気を取られて「全体の森=組織の成長やビジョン」を見失う典型です。そのためリーダーは、木と森の両方を見る視点を意識的に持つ必要があります。
EOSが教える“森”を意識する仕組み
EOS(Entrepreneurial Operating System)とは、アメリカで開発され世界中の企業に導入されている経営フレームワークです。ビジョンを明確にし、組織を成長に導くための実践的なツール群で構成されています。そのため、中小企業から大企業まで幅広く活用されています。ここでは、その中でも「全体=森」を意識するのに役立つ仕組みを紹介します。
木と森の違いを整理する
リーダーが「木ばかりを見て森を見失う」と、日々の業務に流されて全体の成長を阻んでしまいます。下の表は、目の前の細部(木)に囚われてしまう行動と、本来意識すべき全体視点(森)の対比を整理したものです。
木(細部に囚われる行動) | 森(全体を見渡す視点) |
---|---|
毎日のメール対応や資料作成、会議の準備に追われて「今日を乗り切る」ことだけに集中してしまう。 | 会社のビジョンや長期的な方向性を見据え、日々の業務がその実現につながっているかを意識する。 |
一時的なトラブル対応や急な依頼処理に時間を奪われ、本来取り組むべき重要な課題が後回しになる。 | 1年必達項目の達成を優先し、突発的なことに左右されすぎない仕組みを持つ。 |
チェックリストを消す、案件を片づけるといった「やり終えた達成感」に偏り、大局的な判断ができなくなる。 | 四半期の石(Rocks)を決めて実行し、小さな達成感ではなく「大きな成長」につながる成果を優先する。 |
短期的な数字の変動や細かな数値に一喜一憂して、戦略をコロコロ変えてしまう。 | 長期的なスコアカードの推移や全体の流れを確認し、大きな方向性を保ちながら調整する。 |
ビジョン→1年必達項目→石の流れを持つ
EOSでは、まず会社の未来像であるビジョンを定めます。その上で、ビジョンに向かって進むための1年必達項目を設定します。さらに、それを四半期ごとに分解した具体的な行動が石(Rocks)です。これらは「森=全体」を見渡すための仕組みです。そのため、目の前の小さな課題で安易に変えるべきものではありません。
石(Rocks):森を守るための優先課題
石は「今期必ずやり遂げるべき最重要課題」です。日常業務に流されそうになっても、石を優先することで森=会社の成長を守ることができます。そのため、石はチームが迷わず進むための道しるべとなります。
スコアカード:森の健康状態を数値で見る
スコアカードは、森全体が健全に成長しているかを数値で示してくれるツールです。短期的な変動に振り回されず、安定的に確認できます。さらに、課題を早期に発見して改善につなげられる点も大きな強みです。
アカウンタビリティチャート:森を管理する役割を明確にする
アカウンタビリティチャートは、誰が森全体を管理するかを明確にする仕組みです。責任の所在がはっきりすれば、細かい混乱に振り回されずに済みます。その結果、リーダーは全体を意識した判断が可能になります。
「森ウーマン」「石ウーマン」を目指すということ

木を見る力と森を見る力の両立
細部に気づく「木を見る力」と、大局を捉える「森を見る力」。この両方をバランスよく持つことが、女性リーダーの大きな成長につながります。そのため、日々の業務をこなしつつも「森」を意識する姿勢が欠かせません。
全体視点を持つリーダーはチームを安心させる
森全体を見渡すリーダーは、チームを安心させます。さらに、日常業務に忙しいメンバーに方向性を示すことができます。視野の広さこそ、リーダーに求められる資質です。
ビジョン実現こそが森を見るリーダーの役割
女性リーダーの最終的な役割は、会社のビジョンをチームとともに実現することです。そのためにEOSツールを活用し、森全体を意識したリーダーシップを発揮していきましょう。
まとめ|全体視点を持つ女性リーダーへ
「木を見て森を見ず」にならないためには、ビジョン→1年必達項目→石という流れを守ることが大切です。さらに、スコアカードやアカウンタビリティチャートを活用すれば安心です。目の前の仕事だけでなく、広い視野でチームを導ける“森ウーマン”を目指しましょう。
書籍紹介|『TRACTION』とは?
『TRACTION』は、EOS(Entrepreneurial Operating System)の公式ガイドブックです。ビジョン→1年必達項目→石(Rocks)という全体視点をつくる流れや、スコアカード、アカウンタビリティチャートといった仕組みが詳しく解説されています。そのため、女性リーダーが「目の前の細部=木」ばかりにとらわれず、「全体=森」を見渡す力を養うのに最適な一冊です。
▶『TRACTION』 ビジネスの手綱を握りなおす 中小企業のシンプルイノベーション
ジーノ・ウィックマン 著