EOSで育つリーダーの成長段階

遠慮して責任を問えない女性リーダーへ|LMAで育てる力

白いスーツと赤いインナーを着た女性リーダーが真剣な表情で前を見つめている。責任を問う力をテーマにした記事のアイキャッチ画像。 EOSで育つリーダーの成長段階

なぜ“責任を問う”ことに遠慮してしまうのか?

「本当は言わなきゃいけないのに、伝えられなかった」「注意したら嫌われそうで、見て見ぬふりをしてしまった」──こんな葛藤を抱えている女性リーダーは少なくありません。

日本の職場文化には、「叱責=相手を否定すること」「責任を問う=厳しい人だと思われる」という根強いイメージがあります。特に、周囲との調和を大切にしてきた女性リーダーにとって、誰かに責任を課すという行為は、強く言いづらい領域なのです。

しかし、リーダーとして成長し続けるには、「遠慮」だけでは乗り越えられない壁があります。それが「責任を問う力」です。

EOSが示す「責任を問う力」=LMAの“A”とは?

EOS(Entrepreneurial Operating System)では、リーダーの基本的な役割を LMA(エルエムエー:Lead〈リード〉、Manage〈マネージ〉、hold Accountable〈ホールド・アカウンタブル〉) の3つに分けて定義しています。その中でも最後の“A”――hold Accountable〈ホールド・アカウンタブル〉=責任を問うが、最も避けられやすい機能だといわれています。

しかし、このAが機能しないと、チームは「やりっぱなし」「言いっぱなし」になってしまい、成果が出ない状態が続いてしまいます。

“期待を明確にする”がスタート

「責任を問う」前にまず必要なのが、相手に対して「何を期待しているのか」を明確に伝えることです。

たとえば、「この業務はいつまでにどのレベルで終わっているべきか」「何を成果として捉えるのか」などをあいまいにせず、事実と目標に基づいて示すことが重要です。

そして、期日が来たときに「どうなったか」を確認し、できていなければ「なぜ?」を対話し、次にどう進めるかを一緒に考える。これがLMAのA=責任を問うプロセスです。

責任を問うことは、女性リーダーの「本当の優しさ」

「責任を問うと、きつく見えるかも」「嫌われたらどうしよう」──そう感じて、遠慮してしまう女性リーダーは少なくありません。

しかし、本当に優しいリーダーとは、曖昧なまま放置せず、相手の成長とチームの未来のために向き合える人です。責任を問わずにやり過ごすことは、一見やさしさに見えても、結果として部下を迷わせ、育たない状況をつくることになります。

責任の所在が不明なまま働くチームは、常に不安と混乱を抱えながら業務を行うことになります。これはむしろ“やさしくない”マネジメントであり、リーダーとしての役割放棄と言っても過言ではありません。

責任を明確にするからこそ、部下は安心して挑戦できます。責任を問えるからこそ、リーダーは権限を手放し、育成に集中できるのです。そしてそれが、結果的にチームを、組織全体を成長させる原動力になります。

「遠慮」は時に優しさではなく、変化や衝突を避ける“保身”になってしまうこともあります。厳しさの裏にある信頼と期待を伝える。それができて初めて、私たちは本物のリーダーと呼ばれるのではないでしょうか。

共共感+事実で伝える「フィードバック」のコツ

白いスーツと赤いインナーを着た女性リーダーが笑顔で前を向いている。信頼と成長を支えるマネジメントを象徴する表情。

責任を問うときに重要なのは、「叱責」ではなく、フィードバックという考え方です。フィードバックとは、相手の行動をより良くするためのコミュニケーション。怒ることでも、我慢することでもありません。

EOSでは、「明確な期待を伝え、それをどう実行できているかを継続的に確認する」ことがリーダーの役割とされています。そのうえで、効果的なフィードバックには、いくつかのコツがあります。

女性リーダーが使いやすい“4ステップ”フィードバック

以下は、責任を問う場面で使える具体的なフィードバックの流れです。共感から入ることで防御的にならず、伝えたいことがきちんと届きます。

ステップ1:状況の理解(共感+観察)

「最近、業務が立て込んでいたのは理解しているよ。全体的に忙しい週だったね。」

まずは相手の立場や状況に理解を示します。ただし、その状況がミスや遅れの“正当な理由”だと認めるわけではありません。共感しつつ、あくまで客観的に状況を見守る姿勢が大切です。

ステップ2:事実の提示

「でも、報告書が金曜の時点で提出されていなかったのは事実だよね。」

感情ではなく、観察可能な事実にフォーカスして伝えます。声のトーンや言い方も冷静に。非難や攻撃ではなく、「起きたこと」を共有する意識が重要です。

ステップ3:期待の明確化

「この業務は“毎週金曜提出”と最初に約束していたと思うけれど、違っていた?」

一方的に責めるのではなく、合意していた約束やルールをあらためて確認することで、相手にも「責任」があることを自然に思い出してもらうステップです。

ステップ4:次への確認と促し

「来週以降はどう改善できそう?私も必要ならサポートするから、一緒に考えよう。」

責めるのではなく、前向きに解決の道を探ります。この姿勢が、女性リーダーならではの“しなやかな強さ”につながります。支援を申し出ることで、相手も改善に向かいやすくなります。
責任を促しつつ、自分の役割も明示。

    この4ステップをベースにすれば、「言いづらいこと」でも、相手にきちんと伝わり、チームとしての信頼関係も深まります。

    また、フィードバックは継続的に行うことが前提です。週次ミーティングや1on1の場で、定期的に行動や結果を見直す文化があることで、「責任を問う」が特別なことではなく、日常の一部になります。

    EOSでは、週次のL10ミーティング(10点満点ミーティング)内で、課題をIDS(Identify・Discuss・Solve)のステップで扱います。これは、「何が本当の原因かを見極める(Identify)」「チームで率直に議論する(Discuss)」「その場で解決策を決定する(Solve)」という、シンプルで実行重視の課題解決ステップです。

    つまり、「決めたことを守る」「実行することを育てる」こと自体が、責任を問う文化の土台なのです。

    「ちゃんと伝えなきゃ」と身構えるのではなく、「よくなるために一緒に考える」という気持ちで向き合う。それが、LMAのA=責任を問う場面での、女性リーダーらしい“しなやかな強さ”です。

    まとめ:“遠慮”ではなく“育てる”という視点を

    女性リーダーが責任を問うことを避けてしまう背景には、相手への思いやりや空気を読む力が働いています。ですが、その優しさが「遠慮」としてチームの成長を止めてしまっては、本末転倒です。

    LMAのA、「責任を問う」は相手のためでもあり、チームの未来のためでもあります。そして何より、リーダー自身の信念と覚悟が問われる行動です。

    あなたのチームは、あなたが「信じて問う」ことで、きっと変わります。

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