EOSで育つリーダーの成長段階

会社全体の成果に貢献する視点|EOSが育てる越境リーダーシップ

笑顔で前向きに拳を握る女性リーダー。会社全体の成果に貢献する“越境リーダーシップ”を象徴する表情。 EOSで育つリーダーの成長段階

チームの垣根、越えられていますか?
「自分の担当じゃないし」「他チームのことには口を出しづらい」
そんな遠慮をしていませんか?

けれど、リーダーに求められるのは“自分の領域を守ること”だけではありません。
チームを超えて課題を見つけ、アイデアを出し、全体を前に進める力こそが、必要です。

これからの時代に必要な「越境するリーダーシップ」です。

EOS(起業家型組織運営システム)には、部署や役割を超えて意見を交わす仕組みがあります。
その代表が「L10ミーティング(Level 10 Meeting)」です。

L10では、職位やチームの壁を越えて、会社全体を良くするための建設的な議論が行われます。
自分の役割に責任を持ちながらも、他チームの課題にアイデアを提供する。
そんな姿勢が、リーダーとしての視野と信頼を大きく育てていきます。

今回は、EOSの仕組みを通じて学ぶ「越境するリーダーシップ」について解説します。

💡EOSとは?
EOS(Entrepreneurial Operating System/起業家型組織運営システム)は、アメリカの中小企業で広く導入されている「会社を前進させるための経営フレームワーク」です。
ビジョン・人・データ・課題・プロセス・実行という6つの要素を体系的に整えることで、組織全体を同じ方向に導きます。
日本でも徐々に広まりつつある、シンプルで実践的な経営の仕組みです。

なぜチームの垣根を越えられないのか?

「それはあのチームの領域だから」「自分の仕事じゃないから」
そんな言葉を聞いたことはありませんか?

多くの組織では、無意識のうちに“チームの壁”が生まれています。

女性リーダーの場合、この傾向はさらに強まりがちです。
責任感が強く、調和を重んじるほど、慎重になりやすいのです。
慎重で気配りができる分、「他チームに口を出すのは失礼かも」「関係が悪くなるのは避けたい」と遠慮してしまうことがあります。

しかし、会社の視点で見れば、これは大きなロス。
本来であれば、別チームの課題や改善点を客観的に見られる立場こそ、貴重な“気づきの源”です。
それを口に出せないのは、組織にとってももったいないことなのです。

EOSの考え方では、「構造が先、人はあと(Structure first, People second)」という原則があります。
つまり、誰がどの席に座るかよりも、まずは会社全体の仕組みが整っていることが重要。
リーダー同士が越境しながら意見を出し合うのは、その仕組みをより強くするための自然な行動です。

もし他チームのリーダーが異なる意見を持っていても、恐れる必要はありません。
建設的な反論こそが、会社の成長を生む「健全な摩擦」です。
むしろ、チームの外から見える視点を共有し、会社全体にとっての最適を考えられるリーダーこそ、次のステージへ進む人材です。

越境とは、他人の領域に踏み込むことではなく、「会社の未来に必要なことを、勇気を持って伝える行動」なのです。

越境するメリット

穏やかな笑顔で前を向く女性リーダー。チームの垣根を越えて協働する姿勢を象徴するビジネスシーン。

「他チームに意見するなんて勇気がいる」と感じる人も多いでしょう。
確かに、越境には一時的なストレスや摩擦が伴います。
しかし、それ以上にリーダーとしての成長とチーム全体の前進につながる大きなメリットがあります。

視点メリットデメリット(短期的リスク)
リーダー個人視野が広がり、経営的な判断力が身につく。他チームからの反発や誤解を受けることがある。
チーム全体他部門の強みを取り入れ、チームの質が高まる。一時的に調整コストが増える。
会社全体部門間の壁が薄れ、スピード感ある意思決定が可能になる。既存のルールや慣習を見直す必要がある。
表:越境するリーダーのメリットとデメリット

短期的には「手間」や「摩擦」に感じることもありますが、越境は組織に新しい風を吹き込みます。
他チームへの関心や提案は、結果的に“会社の未来を共に考える姿勢”として信頼を生みます。

EOSのL10ミーティングでは、まさにこの「越境のメリット」が最大化されます。

肩書きや部署を越えて、会社全体にとって最適な意思決定を行うことが目的だからです。

EOSで効果の出る“越境”の仕方

越境は、やみくもに他チームへ意見することではありません。
大切なのは、「会社全体を良くするために、建設的に関わる」という姿勢です。
EOSでは、その行動を仕組みで後押ししています。

1.L10ミーティングで全体視点を持つ

L10ミーティング(Level 10 Meeting)は、部署を超えて意見を出し合える貴重な場です。
それぞれが自分の「席(Seat)」の責任を果たしながらも、会社全体の数字や課題を共有することで、自然と越境思考が育ちます。

他チームの課題を聞いたとき、「それはそっちの仕事だから」ではなく、
「自分のチームにも似た構造があるかも」「このアイデアは全社で使えそう」と考えられるリーダーが、組織を強くします。

2.IDSで“会社最適”の議論をする

EOSの問題解決プロセス「IDS(Identify・Discuss・Solve)」では、誰の問題かではなく、会社にとっての問題として扱います。
越境するリーダーは、特定の部署や立場を超えて、会社全体の成長を基準に議論します。

たとえ自チームに不利な内容であっても、「会社全体の前進につながるなら賛成する」という姿勢が、信頼と尊敬を生み出します。

3.“提案”ではなく“共創”の姿勢で関わる

越境の目的は、他チームを動かすことではなく、一緒により良くすることです。
「こうしたらどうですか?」ではなく、「一緒に考えてみませんか?」という共創の姿勢が、抵抗を減らし、成果を倍増させます。

EOSの仕組みでは、議論を通じて最終的に「決める」ことが重要。
全員の一致ではなく、“一致団結(commitment)”を重視するため、異なる意見も最終的には前進の力に変わります。

このように、L10とIDSという仕組みの中で行う越境は、単なる発言ではなく、会社を動かすリーダーシップの実践です。

越境するリーダーに必要な3つの視点

越境するリーダーとは、単に意見を言う人ではありません。
状況を俯瞰し、他チームの立場や会社全体の方向性を理解しながら動ける人です。
そのためには、次の3つの視点が欠かせません。

1.「自分視点」――主観を持って考える

まず大切なのは、自分の考えを持つこと。
周囲に合わせるのではなく、「自分はどう感じ、どう考えるか」を明確に言語化できることが越境の出発点です。

自分の意見を持てる人は、相手の意見も尊重できます。
主観を持つことは、対立を生むのではなく、相互理解のスタートラインなのです。

2.「チーム視点」――他者の現実を理解する

越境するリーダーは、自分のチームだけでなく、他のチームが抱える背景にも目を向けます。
数字・人員・現場の制約――それらを理解したうえで意見を出すことで、建設的な提案ができます。

共感力と論理性を併せ持つ女性リーダーは、この“他者理解”の視点に優れています。
「相手の現実を知ったうえでどう支援できるか」を考えることが、越境の質を高めます。

3.「会社視点」――全体最適で判断する

最後に必要なのが「会社視点」です。
自分の部署がうまくいくことよりも、会社全体が前進することを優先して判断できる――これが真のリーダーの姿です。

たとえ一時的に自チームの負担が増えたとしても、会社にとってプラスなら提案する。
そんなリーダーが増えることで、EOSが目指す“全員が同じ方向を向く組織”が実現します。

越境するリーダーに共通するのは、「自分・チーム・会社」の3つを行き来できる柔軟さ。

どの視点も偏らせずにバランスよく保つことが、チームと自分の成長を同時に引き上げます。

まとめ|枠を超える勇気が、リーダーの成長をつくる

越境するという行動は、ときに勇気がいります。
立場の違う相手に意見を伝えるのは、誰にとっても簡単なことではありません。
けれど、それを一歩踏み出せる人こそ、リーダーとして大きく成長していく人です。

EOSの仕組みでは、越境は「協調を乱す行為」ではなく、組織を前進させるための健全な対話として歓迎されます。
L10ミーティングやIDSの場で、勇気を持って意見を出すことは、会社にとっても自分にとっても価値ある投資です。

そして越境するリーダーは、単に意見を言う人ではなく、人と人、チームとチームをつなぐ存在です。
その姿勢が周囲の信頼を集め、組織の文化を変えていきます。

「自分のチームのため」ではなく、「会社全体のために」。
その一言を口にできる勇気が、あなたを次のステージへ導いてくれます。

枠を超えるリーダーシップこそ、未来の組織を動かす力です。

書籍紹介

今回のテーマ「越境するリーダーシップ」をより深く理解するためにおすすめしたいのが、EOSを代表する2冊です。
どちらもアメリカの中小企業で実際に活用されているEOSの仕組みをもとに、“チームを超えて会社を動かす力”を学べます。

『Get a Grip(ゲット・ア・グリップ)』

『Get a Grip』は、EOS(Entrepreneurial Operating System)を物語形式で学べるビジネス書です。
経営チームが衝突や混乱を乗り越えながら、会社を再生させていくプロセスがリアルに描かれています。

チームの壁を越え、会社全体の成果を優先して議論する姿勢は、まさに「越境するリーダーシップ」そのもの。
登場人物たちがL10ミーティングやIDSを通じて成長していく姿に、自分自身を重ねられる一冊です。

『Get a Grip(ゲット・ア・グリップ)』—物語でわかるEOSの導入プロセス
ジーノ・ウィックマン/マイク・パトン 著

『TRACTION(トラクション)』

『TRACTION』は、EOS(Entrepreneurial Operating System)の公式ガイドブック。
ビジョンの共有、人材配置、データ管理、課題解決、プロセス整備、実行力――
企業を動かす6つの要素を体系的に整える方法が詳しく解説されています。

単なる経営理論ではなく、「仕組みで会社を前進させる」ための実践書です。
リーダーとして組織を成長させたい方、会議や人の動きをもっと良くしたい方におすすめです。

『TRACTION』ビジネスの手綱を握りなおす 中小企業のシンプルイノベーション
ジーノ・ウィックマン 著

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