「なんで全部、私が頑張らなきゃいけないの?」
誰かに頼ることが苦手で、責任感の強さゆえにすべてを抱え込んでしまう――。
そんな女性リーダーがマネジメントに疲れ、悩みながらも誰にも弱音を吐けずにいる姿を、あなたもどこかで感じたことがあるのではないでしょうか。
本記事では、自分を責めずに「チームに任せる」ための新しいリーダー像として
Enabler(イネーブラー)という考え方をご紹介します。
「引っ張らなくても、チームは動く」。
そんな可能性を、EOS(Entrepreneurial Operating System)の視点から紐解いていきます。
“全部自分でやる”リーダーは、もう限界?
「任せたいけど、任せられない」「結局、最後は自分がやるしかない」
そんなふうに感じながら、日々の業務とメンバーのマネジメントに追われている女性リーダーは少なくありません。
真面目で責任感が強く、人一倍まわりに気を遣える――。だからこそ、誰かに頼ることが「甘え」のように思えてしまい、結局は自分ひとりで背負い込んでしまうのです。
でも、ちょっと想像してみてください。
あなたが無理をし続けることで、チームの誰かが「どうせ最後は◯◯さんがやるから」と動かなくなってしまったとしたら…。
それは、あなたの本意ではないはずです。
「自分で抱える」のではなく、「チームで育てる」リーダーシップへ。
ここからは、頑張りすぎずに「任せる力」を育てていくためのヒントとして、Enabler(イネーブラー)という支援型リーダー像を深掘りしていきます。
Enabler(イネーブラー)とは?支援型リーダーの役割
Enabler(イネーブラー)とは、直訳すると「可能にする人」。ビジネスの現場では、誰かが成果を出せるように支援し、動きやすい環境を整える存在を指します。
リーダーという言葉から、「引っ張る」「指示を出す」「先頭に立つ」イメージを持っている人は少なくありません。けれど、Enabler型リーダーは違います。
Enablerは、主役になるのではなく、主役を生み出す側にまわる人。
誰かの挑戦を支えたり、方向性に迷うチームをさりげなく軌道修正したり、時には見守りながら信じて任せたり――
そんな「支える力」でチーム全体の力を引き出していくのが、Enabler型リーダーの特徴です。
このようなリーダー像は、頼るのが苦手な女性にとって、実はとても相性のよいスタイルです。
自分がすべてを抱えるのではなく、周囲の力を信じ、活かすことで、リーダーとしての役割をまっとうできる。
それが、Enablerという在り方なのです。
指示型リーダーとの違い(表で比較)
Enabler型のリーダーは、「上から指示を出す」従来のリーダーとは異なるスタンスを取ります。
下記の表で、両者の違いを具体的に見てみましょう。
リーダータイプ | 指示型リーダー | Enabler型リーダー |
---|---|---|
スタンス | 前に立って引っ張る | 支えて動かす |
役割意識 | 判断・指示・管理 | 支援・調整・信頼 |
チームとの関係 | 上下関係が明確 | 対等なパートナー |
評価されやすい力 | リーダーシップ・決断力 | 共感力・育成力・受容性 |
部下の状態 | 受け身になりやすい | 自発性が育ちやすい |
リスク | リーダーに依存しやすい | 育つまで時間がかかる |
どちらが正解ということではありませんが、チームが自走する文化を育てるには、Enabler型のような「支える力」が求められる場面が増えています。
EOSで育てるEnabler型リーダーシップ
「支えるリーダーなんて評価されにくい」「結局、強いリーダーしか求められない」
そう感じる女性にこそ知ってほしいのが、EOS(Entrepreneurial Operating System)という組織運営の考え方です。
EOSは、経営やチームづくりに必要な6つの構成要素を体系化し、組織を「機能するしくみ」として育てていく仕組みです。
その中には、人材育成や役割設計に関するツールも豊富に用意されており、Enablerのような支援型リーダーを活かす土壌が整っています。
この章では、Enablerというリーダー像と相性のよいEOSの要素を、具体的に紹介していきます。
LMAとの関連|LeadよりEnableの視点
EOSの人材マネジメントに欠かせない考え方のひとつが、LMA(Lead, Manage, hold Accountable)です。
リーダーはこの3つの役割――「導く(Lead)」「管理する(Manage)」「責任を持たせる(Accountable)」を通じて、チームを機能させます。
しかし、責任感の強い女性リーダーは「Lead=前に立って指示を出す」と捉えがちです。
そこで注目したいのが、Leadを“Enable(支える)”という視点に置き換える考え方です。
チームを引っ張るだけがリーダーシップではありません。
「相手が動きやすいように準備する」「成果が出やすい環境を整える」ことも、立派なLeadの一形態。
これが、Enabler型リーダーの強みとEOSのLMAが重なるポイントです。
▶ 任せたあとは「責任を課す力」も必要に。LMAの“A”の実践方法はこちら
構造化で支援型リーダーの居場所をつくる
Enabler型リーダーが活躍するには、「その人がどう支援し、どんな責任を持つのか」が明確であることが欠かせません。
しかし、役割があいまいなままだと、支援は「ただのお手伝い」と見なされてしまい、成果にもつながりにくくなります。
そこで有効なのが、EOSのアカウンタビリティチャート(責任の見える化)です。
このツールでは、「誰が何に責任を持つか」を先に構造として設計し、その後に適任者をあてはめていきます。
「支援する人」が正式な役割として認められ、責任範囲も明確になることで、Enabler型リーダーは組織の中で正当に評価される立場になります。
支援型のリーダーが「活かされない」のではなく、構造が整っていないだけ。
その仕組みを整えれば、自分らしいリーダーシップを安心して発揮できる土台ができます。
▶ 支援型リーダーを活かす構造のつくり方は、こちらの記事でも詳しく紹介しています
あなたにしかできないリーダーのかたち

「支えること」に価値を感じられる人がいます。
前に立つより、そっと背中を押すほうが自然にできる。
周囲の動きを見て、困っている人に手を差し伸べられる。
そんなあなたの力は、決して「引っ張るタイプじゃないから劣っている」というものではありません。
任せることは、育てること。
そして、育てられたチームは、いつかあなたを支える存在にもなります。
無理に「理想のリーダー像」に合わせようとしなくていい。
Enablerという選択肢は、「あなたらしいリーダーシップ」を肯定し、チームを変えていく力になります。
あなたにしかできない関わり方で、あなたにしかつくれないチームを。
その第一歩は、「すべてを抱え込むのをやめてみる」ことから、はじまるのかもしれません。
まとめ|任せることで、自分らしくチームを動かす
Enabler(イネーブラー)という支援型リーダー像は、「引っ張るのが苦手」「全部自分で抱えてしまう」と悩む女性にとって、新しい道を示してくれる存在です。
EOSのLMAやアカウンタビリティチャートといったツールを活用すれば、支援型リーダーにも明確な役割と責任を与えることができ、組織の中で正当に評価される仕組みが整います。
「任せることは甘えではない」「支えることもリーダーシップ」――
その視点を持てたとき、あなたのチームはきっと、少しずつ動き始めます。
誰かを引っ張るのではなく、「その人が前に進めるように支えるリーダー」へ。
その第一歩を、あなた自身の手で踏み出してみませんか?