女性リーダーとしてチームを率いると、「その場にいない人のこと」が話題にのぼることがあります。誰かの又聞きや、他部署の噂をもとにした議論は、一見有意義に見えても、実は何の解決にもつながらないケースがほとんどです。そこで、EOS(起業家型組織運営システム)では、このような状況を避けるために「当事者参加」の鉄則を明確にしています。
女性チームにありがちな“又聞き議論”の落とし穴
なぜ当事者不在の議論が発生しやすいのか
まず、女性リーダーの現場では、配慮や関係性を重んじるがゆえに「直接は聞きにくい」という空気が生まれがちです。さらに、時間不足から「とりあえず今いるメンバーで話す」選択が起きます。結果として、当事者不在の議論が固定化し、決定が差し戻されて会議が二度手間になります。
配慮や遠慮が裏目に出る瞬間
たとえ女性リーダーが善意で場を守っても、当事者がいないと事実の裏取りができません。したがって、解決策は机上化しやすく、後日「なぜ直接言ってくれなかったのか」という不信に発展します。つまり、信頼と生産性の両方を同時に損なうのです。
課題解決の十戒「又聞きの情報に頼るべからず」
複数関係者が揃わなければ解決しない理由
とくに女性リーダーが扱う課題は、多部門・多職種が絡むことが多いものです。まず、関係者の事実を一点に集約する。次に、同じ定義で課題を捉える。したがって、視点が欠ける状態では全体像が歪み、解決までの道筋も見えにくくなります。
当事者を欠く議論は“ただのおしゃべり”になる
実際、ニッチ・リテールのタイラー・スミスは、当事者不在の議論を「ただのおしゃべり」と呼びます。そこで、又聞きが始まったら会議を止め、後日関係者全員を招集して決めるのです。つまり、場の厳格さこそが時間と質を同時に守ります。
タイラー・スミスの「おしゃべりの時間」エピソード
又聞きが始まったら議論を止める勇気
まず、女性リーダーは「今ここで決めても進まない」と宣言します。次に、当事者の招集と議題の棚上げを即断します。これにより、感情論から事実ベースへの切り替えが、その場で機能します。
全員参加ミーティングに組み替える判断
IDSは、EOSが推奨する課題解決ツール(Identify・Discuss・Solveの3ステップ)です。まず全員で事実をそろえ、次に議論し、最後に解決の実行まで決め切ります。したがって、当事者が揃わない会議では結論を出しません。
- Identify(原因を特定する):まず、課題の“真因”を一行で明文化する。
- Discuss(議論する):次に、事実ベースで選択肢を出し、優先順位を決める。
- Solve(解決する):そして、誰が・いつまでに・何をやるか(ToDo)を確定し、必要に応じて仕組み化する。
女性リーダーがこのルールを守るほど、再発は減り、成果は加速します。もし欠席者がいるなら、全員が参加できるミーティングに組み替えましょう。
当事者不在の議論が生む3つの悪影響
1. 悪口・陰口化して信頼が損なわれる
やがて、本人のいない場では評価が独り歩きします。すると、推測が批判に変わります。だからこそ、女性リーダーは当事者不在の議論を許さない姿勢を明確にし、信頼の毀損を未然に防ぎましょう。
2. 情報が歪み、誤解が拡散する
また、又聞きには主観が混ざります。すると、事実が薄れます。その結果、誤解が拡散し、現場実装が難しくなります。まずは、一次情報の確認を徹底しましょう。
3. 時間と生産性の浪費
つまり、解決につながらない会議は二重コストです。会議時間とやり直し時間の両方を失います。したがって、女性リーダーは最初から当事者参加を前提に設計すべきです。
EOS式・全員参加の会議ルール
事前に関係者全員を特定・招集する
まず、女性リーダーは会議前に「誰が当事者か」を洗い出します。とくに、役割・意思決定権・実務キーパーソンの三点を押さえ、全員の予定を優先確保します。これが、最短で解決に至る近道です。
欠席者が出たら議題を持ち越す柔軟性
一方で、無理に進めないことも重要です。いったん議題を保留し、当事者の一次情報をToDo化して収集します。結果として、次回の議論は短く、かつ深くなります。
当事者不在と当事者参加の比較表
項目 | 当事者不在の議論 | 当事者参加の議論 |
---|---|---|
議論の質 | まず、憶測や感情が混ざり、一次情報が不足するため論点が散漫になりやすい。さらに、女性リーダーの意図も誤解されやすい。 | 一方で、一次情報と事実を起点に論点が収束する。定義が共有されるため、本質的課題に集中しやすい。 |
意思決定 | 再確認や差し戻しが頻発し、意思決定が遅い。結果として、翌週以降に再議論が必要になることが多い。 | その反面、その場で決め切れる場面が増える。決定の背景も透明化され、納得感が高い。 |
実行力 | 責任と期限が曖昧で、現場の実装が進みにくい。したがって、結果的に形骸化しやすい。 | 誰が・いつまでに・何をやるかが明確化。ゆえに、現場での動きが早く、進捗が可視化される。 |
信頼への影響 | やがて、悪口・陰口化し、心理的安全性が低下。チームの結束が弱まる。 | 逆に、透明性が高まり、相互信頼が強化される。意見の相違も建設的に扱える。 |
女性リーダーの負荷 | 火消し・調整が増え、精神的負担が蓄積する。加えて、会議の持ち越しも増える。 | 一方で、会議設計に集中でき、調整コストが減る。意思決定と実行にエネルギーを配分できる。 |
学びと再発防止 | 原因が曖昧で、学びが残らない。結果、似た問題が繰り返される。 | 対照的に、原因と対策が文書化され、再発防止が進む。チームの課題解決力が向上する。 |
女性リーダーが実践する「おしゃべりを解決に変える」習慣

感情論から事実ベースへ会話を切り替える
まず、「私はそう感じた」ではなく、「事実としてこうだった」に言い換えます。次に、証拠(データ・ログ・現物)を添えます。すると、当事者不在の議論を避けやすくなります。女性リーダーこそ、言葉を事実に寄せましょう。
課題リストに記録し、IDSで再度議論する
そのうえで、雑談で流さず課題名を明文化して課題リストへ入れます。さらに、原因仮説を一行で書き、次回IDSで当事者全員と再議論します。結果として、当事者不在の議論は激減します。
まとめ|当事者参加が課題解決の第一歩
当事者不在の議論は、ただのおしゃべりです。だからこそ、女性リーダーは場の設計者として、全員参加を徹底し、事実で話し、IDSで決めましょう。結果として、解決の質もスピードも上がり、チームの信頼も強くなります。
とくに、当事者不在の議論を「おしゃべり」で終わらせないためには、毎週の運用と共通言語が欠かせません。その設計図として最適なのが『TRACTION』です。
参考書籍『TRACTION』の活用ポイント
『TRACTION』は、EOS(起業家型組織運営システム)の公式ガイドブックです。女性リーダーが当事者不在の議論を断ち切り、事実ベースで解決まで導くための実践手順がまとめられています。とくに本稿のテーマと直結するのは、次の4つです。
- まずは IDS(Identify・Discuss・Solve)を場の標準にする:原因を特定→事実で議論→解決を決め切る。当事者が揃わない場では結論を出さないという原則を明示。
- 次に 課題リスト:又聞きや噂話はその場で処理せず正式案件へ登録。関係者を指定し、次回IDSで扱う。
- さらに L10ミーティング(10点満点ミーティング)のリズム:週次の定例で当事者を確実に招集。揃わない議題は持ち越すを徹底し、二度手間を防ぐ。
- 最後に アカウンタビリティチャート&スコアカード:誰が当事者かを即時に特定し、数値で事実確認。感情や推測の入り込む余地を小さくする。
「会議を前進させたい」「議論を成果につなげたい」と感じる女性リーダーにとって、『TRACTION』は今日から使える具体策の宝庫です。ぜひ、次のミーティングから活用してみてください。
▶ 『TRACTION』 ビジネスの手綱を握りなおす 中小企業のシンプルイノベーション
ジーノ・ウィックマン 著