「悪口や批判でしか権威を保てないリーダー」——そんな光景を見たことはありませんか? 自分の数値や責任には目をつむり、他人の失敗や弱みを指摘して立場を保とうとする…。その場では強そうに見えても、チームの信頼は確実に失われていきます。
こうした問題に有効なのが、EOS(Entrepreneurial Operating System)です。EOSは経営の現場で使える仕組みを体系化したシステムで、責任の所在を明確にし、組織全体を同じ方向に動かすことを目的としています。その中でも「アカウンタビリティチャート」は、悪口や批判に依存したリーダーシップを解消する強力なツールです。
悪口リーダーが生み出す問題
悪口や批判に依存したリーダーシップは、表面的には強そうに見えます。しかし、組織を弱体化させます。本人が自分の責任を直視しないため、周囲も課題の本質に向き合えず、信頼関係が損なわれるからです。
悪口リーダーの特徴
- 責任の所在を曖昧にして他人を批判する
- 自分の数値目標には目をつむり、他人の失敗を指摘する
- 「誰が悪いか」を探すことにエネルギーを使う
- 言いやすい人にだけ不満をぶつけ、ストレスを解消している
- 他人を下に落とし、自分が上に立ったと錯覚する発言をしている
解決策:アカウンタビリティチャートで責任を明確化する
EOSのアカウンタビリティチャートは、部署や役職ではなく、機能(Function)・役割(Role)・責任範囲(Accountability)を明示する仕組みです。つまり「誰が何を最終的に担うのか」を明確にします。これにより、他人への批判に依存する余地が小さくなるのです。
責任の所在を明確にする
批判依存型リーダーは、自分の成果が出ないときに他人を責めがちです。例えば、数値目標が未達成のときに「営業が悪い」「バックオフィスが遅い」と声を荒げるケースです。しかし、アカウンタビリティチャートでは「新規顧客開拓」「既存顧客フォロー」「在庫管理」など、それぞれの最終責任者が明示されます。だからこそ、責任の範囲がはっきりし、誰かに押し付ける余地はなくなります。その結果、自分の役割を果たすことに集中せざるを得ません。
批判を防ぐ仕組み
批判依存型リーダーの行動 | アカウンタビリティチャートでの解決策 |
---|---|
自分の数値目標が悪いのに、他人を責める | 各機能に責任者を設定し、成果の所在を明確にする |
「誰が悪いか」探しに終始する | 役割定義に基づき「どの機能が成果を出すべきか」に意識を向ける |
責任をあいまいにし、他人を批判する | 機能・役割・責任範囲を明示し、押し付けられない仕組みにする |
女性リーダーが果たす使命

さらに、女性リーダーは俯瞰的な視点を活かせます。例えば「その批判は役割の定義と合っていますか?」「その課題はどの機能に紐づいていますか?」と問いかけるのです。すると議論は人ではなく構造に戻り、建設的な対話に変わります。
つまり、もし女性リーダーが批判依存型リーダーをまとめる立場なら、感情的に反応する必要はありません。俯瞰で判断し、役割・機能・責任範囲を明確化することこそ使命です。結果として、悪口で権威を保つリーダーシップは通用しなくなります。そして、「責任を果たす人こそ信頼を得る」文化が育っていくのです。
まとめ|悪口ではなく責任で信頼を築く
- 悪口や批判に頼るリーダーは、責任の所在を曖昧にして権威を保とうとする
- アカウンタビリティチャートは、機能・役割・責任範囲を明示し、批判ではなく「自分の責任を果たすこと」に意識を向けさせる
- 女性リーダーは俯瞰的に「役割は?」「機能は?」「責任範囲は?」と問い直し、議論を建設的に変えることができる
- 責任を果たす人こそ信頼を得る文化をつくることで、健全なチームワークが生まれる
書籍紹介
『TRACTION』は、EOS(Entrepreneurial Operating System)の公式ガイドブックです。本記事で紹介したアカウンタビリティチャートをはじめ、L10ミーティング、石(Rocks)、数値目標を管理するスコアカードなど、健全な組織を築くためのツールが体系的に解説されています。悪口や批判ではなく、成果と信頼でリーダーシップを築きたい女性リーダーに最適な一冊です。
▶『TRACTION』ビジネスの手綱を握りなおす 中小企業のシンプルイノベーション
ジーノ・ウィックマン 著