「弱さを見せること」と「弱音を吐くことの違い」は、女性リーダーが特につまずきやすいテーマです。
「弱音を吐いちゃいけない」「迷惑をかけないように強くいなきゃ」。がんばり屋の女性ほど、こうした“思い込み”を抱えがちです。
しかしEOS(Entrepreneurial Operating System)が教えているのは、「弱さを見せること」こそ強いリーダーの条件だということ。
そして、「弱さを見せる」と「弱音を吐く」はまったく別物です。
この2つを正しく理解できると、チーム運営は一気に楽になり、部下との距離も縮まります。
この記事では、両者の違いと、EOSが大切にする“Vulnerability(ヴァルネラビリティ)”の本質を女性リーダー向けに解説します。
EOSとは?
経営者やチームが「ビジョンを明確にし、実行を仕組み化する」ための実践的システム。
人や組織の課題を“感情論”ではなく“仕組み”で解決できるよう支援します。
「弱さを見せる事」と「弱音を吐く事」の違い
弱さを見せるとは(Vulnerability)
EOSでいう「弱さを見せる」は、感情発散ではありません。
チームの成果につながる情報を、正直にオープンにする姿勢です。
◆ Vulnerability(ヴァルネラビリティ)とは
- 「分からない」と言える勇気
- ミスや限界を隠さず共有する姿勢
- 必要な時に「助けてほしい」と言えること
- できていないことを率直に認める誠実さ
弱音を吐くとは
“弱音”は、気持ちを軽くするための感情の放出が中心です。
しかし弱音が続くと、その延長線上で責任転嫁が起きやすくなります。
- 誰かや環境のせいにしてしまう(責任転嫁)
- 原因が外に向きやすく、改善の糸口がつかめない
- 聞いた側にネガティブが伝染しやすい
- 課題の核心にたどり着きにくく、チームの思考が止まる
“弱さを見せること”と違い、弱音や責任転嫁は課題を遠ざけてしまう危険なサインです。
本人だけでなく、聞いたメンバーの士気も下がり、チーム全体が前進しづらくなります。
周囲に与える影響
弱さと弱音が生む影響の違い
「弱さを見せる」のか、「弱音・責任転嫁」に向かうのかで、チームに与える影響は大きく変わります。
どちらも一見“弱い姿勢”に見えますが、実際には組織の雰囲気・思考レベル・協力体制に、まったく逆の結果をもたらします。
まずは、それぞれがどのような影響を生むのかを整理してみましょう。
弱さと弱音がチームにもたらす影響
「弱さを見せる」のか、「弱音・責任転嫁」に向かうのかで、チームに与える影響は大きく変わります。
どちらも一見“弱い姿勢”に見えますが、実際には組織の雰囲気・思考レベル・協力体制に、まったく逆の結果をもたらします。
理解を深めるために、両者がチームにもたらす違いを具体的なシーン別に整理してみましょう。
| シーン | 弱さを見せるスタンス | 弱音・責任転嫁のスタンス |
|---|---|---|
| 仕事がうまく進まず、成果が出ないとき | 状況と「うまくいっていない点」を素直に共有し、「一緒に考えてほしい」と協力を求める。 | 「忙しすぎて無理」「人が足りないからできない」と、環境のせいにしてしまう。 |
| メンバーから指摘やフィードバックを受けたとき | 「教えてくれてありがとう」と感謝し、自分の抜けを認めて次に活かそうとする。 | 「でも現場が…」「あの人が…」とすぐ言い訳し、相手が本音を言いづらくなる。 |
| トラブルやミスが発生したとき | 「これは私の判断が足りませんでした」と認め、原因と再発防止を一緒に考える。 | 「お客様が無茶を言う」「本部の指示が悪い」と外に責任を向け、原因があいまいになる。 |
| チームが疲れている・雰囲気が重くなっているとき | 「私も正直しんどい。でも一緒にどう乗り越えるか考えたい」と前向きな対話にする。 | 「どうせ変わらない」「頑張ってもムダ」と諦めを口にし、ネガティブな空気を広げる。 |
比較してみるとわかるように、「弱さ」はチームを強くし、「弱音」はチームを重くします。
EOSで学ぶ ”Vulnerability”
Healthy vs Smart:誠実さは“成果”に勝る
EOSでは、リーダーシップを「Smart(賢さ)」と「Healthy(健全さ)」の2つで捉えます。
一般的にはスキル・知識・経験といった“Smart”が注目されがちですが、EOSが本当に重要だと位置付けているのは“Healthy=人としての健全さ”です。
健全さとは、誠実さ・正直さ・オープンさ・他者への敬意が揃った状態のこと。
どれだけ成果を出していたとしても、嘘・隠しごと・責任転嫁があれば、組織は静かに崩れていきます。
- 正直であること(うまくいっていないことを隠さない)
- 誠実であること(自分の役割と責任を果たす)
- 尊重すること(相手を下げず、対等に向き合う)
- オープンであること(本音を出して議論ができる)
女性リーダーは特に「迷惑をかけたくない」「弱みは見せられない」という思いから、自分を強く保ちすぎてしまうことがあります。しかし健全さとは、完璧であることではありません。
弱さを隠す組織は、問題も隠れる。
弱さを見せられる組織は、問題が早く見える。
その違いが、チームのスピードを決定づけます。
L10ミーティング:正直さが評価される文化
L10ミーティングは、EOSの中でも最も重要な「チームの習慣」です。
毎週同じ時間に行われ、メンバー全員が本音で話すことを前提としています。
ここでは、「取り繕わない」「隠さない」「事実をまっすぐに伝える」ことが評価されます。
そのため、弱さを見せても責められるのではなく、むしろチームの信頼が深まる仕組みになっています。
IDS:L10の中で行う“本音の問題解決”
IDS(Identify・Discuss・Solve)は、L10ミーティングの中で行う問題解決プロセスです。
ここでは本音が出なければ問題が特定されず、議論も改善も進みません。
弱さを見せる姿勢があると「本当に困っていること」や「実は分かっていないこと」が表に出て、問題の核心に早くたどり着けます。
- 弱さを出す → Identify(問題の特定)が正確になる
- 責任転嫁しない → 論点がズレず、議論が深まる
- 本音を共有する → Solve(解決)が早くなる
弱音や責任転嫁があると、問題は表面化せず、議論が空回りしてしまいます。
また、弱音や責任転嫁は一度クセになると無意識に出てしまうことがあり、特に役職者ほど注意が必要です。
立場が上になるほど、その一言がチーム全体の思考や雰囲気に大きな影響を与えてしまいます。
経営チームが弱さを見せると全社が変わる
ここでいう「経営チームが弱さを見せる」とは、まず経営チーム内部でVulnerabilityを発揮するということです。
トップが“分からない・助けてほしい・ミスした”と正直に言える姿勢を示すと、社内の空気が一気に変わります。
EOSでは、経営チームの健全性(Healthy)が会社の健全性を決めると言われています。なぜなら、上層部のコミュニケーションスタイルや問題への向き合い方は、そのまま部門長・店長・スタッフに伝播するからです。
- 経営チームが弱さを隠す → 部門長も隠す → 店長も隠す → 現場で問題が見えなくなる
- 経営チームが弱さを見せる → 本音が出る → 課題が早く特定される → 解決スピードが上がる
特に女性リーダーの多くは「弱さを見せたら信頼を失うのでは?」と不安を抱えがちです。しかし、経営チームが堂々と弱さを開示できる文化があると、部下は安心して本音を言えるようになり、隠しごとゼロの“健全な組織”が育ちます。
まとめ|弱さは“力”になる、弱音は“負担”になる
弱さを見せることは、甘えでも無責任でもありません。
それは健全な組織をつくるための、リーダーの大切なスキルです。
- 弱さはチームを前進させる“力”
- 弱音はチームを重くする“負担”
- EOSは弱さを建設的に扱う仕組みがある
- 完璧なリーダーより、正直なリーダーが信頼される
「弱さを見せること」と「弱音を吐くこと」は似ているようで、組織にもたらす影響はまったく異なります。弱さを見せることは誠実さと正直さの表れであり、チームが前に進むための大切な礎です。一方で弱音や責任転嫁は、課題を遠ざけ、組織の思考と改善のスピードを止めてしまいます。
本音で向き合い、課題を正しく捉え、チームと共に改善に向かう“健全さ”が必要です。弱さを見せられるリーダーほど、周囲は安心し、組織は強く、しなやかに成長していきます。
弱さは欠点ではなく、組織を健全に導くための力。あなたが正直さを示すことで、チームの空気が変わり、問題は表に出て、対話が深まります。Vulnerabilityを受け入れることこそが、女性リーダーとしての新しい強さを育てる一歩です。
書籍紹介
『TRACTION』は、EOS(Entrepreneurial Operating System)を体系的に学べる公式ガイドブックです。
特に本書では、“弱さを見せられるリーダーこそ組織を強くする”というEOSの考え方が随所に示されています。
L10ミーティングやスコアカード、Rocks(重要目標)など、正直さと健全性を軸にした仕組みが詳しく解説されており、女性リーダーが「一人で抱え込む」状態から「チームで前に進む」状態へシフトする大きなヒントが得られます。
完璧を手放し、チームと本音で向き合いながら成果を上げたいリーダーにとって、まさに実践に直結する一冊です。
▶『TRACTION』ビジネスの手綱を握りなおす 中小企業のシンプルイノベーション
ジーノ・ウィックマン 著
