「これをやれば解決するのに」「なぜこうならないんだろう?」──直感的に答えが見えるのに、周囲に伝えた瞬間ポカーンとされてしまう。女性リーダーの中には、そんな経験を持つ方が少なくありません。
結論自体は正しいのに、そこまでの道筋を伝えきれず「感覚的な人」と思われてしまうのです。
実はこの現象は、女性リーダーの強みである「直感力」の裏返しです。しかし、周囲を動かすためには、その直感を論理に翻訳して伝える力が欠かせません。ここで役立つのが、シンプルで応用しやすいPREP法です。
感覚派リーダーのあるある|結論だけで伝わらない
直感は鋭いのに周囲がポカーン
頭の中では論理が整理されています。ですが、外に出すと「答えだけ」になり、周囲がついてこられないことがあります。特に会議や面談では「なぜそう言えるのか?」が見えず、納得を得られません。
後から正しいとわかっても評価されにくい
感覚的に掴んだ結論は、あとから正しいと証明されることが多いです。けれども、その場では「説明不足」と見なされ、評価につながらないこともあります。
理路整然と伝えるPREP法とは?
PREP法は「結論 → 理由 → 具体例 → 再結論」の流れで整理するシンプルな型です。直感型リーダーにとっては、頭の中の“ショートカット思考”を外に伝える補助輪になります。
ステップ | 内容 |
---|---|
Point(結論) | 最初に結論を明示する。「◯◯は実行すべきです」など。 |
Reason(理由) | 結論に至った理由を述べる。「なぜなら〜だからです」 |
Example / Evidence(根拠・事例) | 数字や具体例で裏付ける。「調査結果では…」「実際の事例として…」 |
Point(再結論) | 最後に結論を確認して締める。「だから◯◯なのです」 |
女性リーダーとPREP法の相性

直感力を論理で補強する
女性リーダーは共感力や直感力に優れます。一方で「感覚的すぎる」と見られるリスクもあります。したがってPREP法を活用すれば、直感を論理で補強し、説得力を高められます。
説得力が増し、チームを動かせる
PREP法を身につけると説明の筋道が明確になります。そのため、チームの納得度が上がり、リーダーシップを発揮しやすくなります。
EOSの視点から見たPREP法
PREP法は話し方のテクニックにとどまりません。実務で活用するなら、経営フレームワークのEOS(Entrepreneurial Operating System)と組み合わせると、さらに効果を発揮します。
EOSは米国発の「会社を成長させるための実践的フレームワーク」です。経営者やリーダーがビジョンを明確にし、組織全体を同じ方向に進めるために開発されました。世界中の中小企業で導入されています。EOSには「ビジョンを描く」「人を適材適所に配置する」「数字で管理する」「課題を解決する」といった、シンプルで強力なツールがあります。
その中の一つに「IDS(Identify・Discuss・Solve)」があります。課題を特定し(Identify)、事実に基づいて議論し(Discuss)、最後に解決策を決めます(Solve)。この流れはPREP法とよく似ています。結論から話し、理由を示し、根拠を添え、最後に再結論で締めるというステップと重なります。
IDSとの共通点
PREP法で「結論→理由→根拠→結論」と整理するのと同じように、IDSも「課題→議論→解決」の順で進めます。両者は論理的な筋道を守り、話の脱線やすり替えを防ぎます。PREP法は個人の発言力強化に、IDSはチーム全体の課題整理に役立ちます。
スコアカードで根拠を補強できる
PREP法の「根拠(Evidence)」部分を強化するには、EOSの「スコアカード」が役立ちます。スコアカードは会社やチームの重要な数字を毎週追跡する仕組みです。曖昧な意見ではなく事実をもとに議論を進められます。直感で掴んだ課題に数字という裏付けを添えることで、女性リーダーの説得力は一気に高まります。
PREP法を身につける具体的な方法
1. 日常の会話で「結論から言う」を意識する
PREP法の第一歩は、日常で「結論を先に伝える」習慣を持つことです。たとえば「今日は雨だから傘を持っていこう」「この資料は修正が必要です、理由は◯◯だからです」と言うだけでも練習になります。小さな実践を積むことで、会議や面談でも自然に口に出せるようになります。
2. 「なぜ?」を3回繰り返す
感覚的に結論が出るリーダーほど、理由や根拠を言葉にするのが苦手です。そこで「なぜ?」を3回繰り返してみましょう。
例:「この人に任せない方がいい」→なぜ?「経験不足だから」→なぜ?「期限を守れないことが多いから」→なぜ?「GWCのCapacityが不足しているから」
このように整理することでPREP法の「Reason」「Evidence」が強化されます。
3. メモにPREPの枠で書き出す
会議やプレゼンの前に、ノートに「P→R→E→P」と枠を作り、一言ずつ書き出しましょう。例:
Point:新しい施策を導入すべき
Reason:既存施策の効果が下がっている
Evidence:リード数が前年同期比で20%減少している
Point:だから新しい施策を導入すべき
文字にすることで感覚を「論理の型」に変換できます。慣れてくると、メモがなくても頭の中で瞬時に整理できるようになります。
4. EOSの会議で実践してみる
PREP法はEOSの仕組みとも相性が抜群です。特にL10ミーティングやIDSの場で活用すると効果的です。
– Identify(課題特定):Point(結論)
– Discuss(議論):ReasonとEvidence
– Solve(解決):最後のPoint(再結論)
PREP法を意識して発言すれば、会議での説明が散らかりません。議論もスムーズになります。さらに女性リーダーにとっては「直感に頼りすぎないリーダーシップ」を発揮できる場となり、自信にもつながります。
まとめ|感覚を論理に変えて周囲を動かす
感覚派女性リーダーは直感で本質を掴む力に優れます。しかしそのままでは周囲に伝わらず、説得力を欠くこともあります。したがってPREP法で「感覚を論理に翻訳」すれば、発言力と影響力が高まり、チームを動かす存在へと成長できます。
書籍紹介|EOSをさらに深く学ぶ一冊
『TRACTION』は、EOS(Entrepreneurial Operating System)の公式ガイドブックです。PREP法と同じように「論理的に整理して伝える力」を組織全体に広げるための実践的フレームワークがまとめられています。
女性リーダーが直感を論理で補強し、周囲を動かす力を養うためにも役立つツールが数多く紹介されています。
特にL10ミーティング(10点満点ミーティング)、石(Rocks)、スコアカードなどは、説得力のある発言やチームの合意形成をサポートします。完璧主義から「まず前進する」姿勢へと切り替えるための実践知が詰まった一冊です。
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ジーノ・ウィックマン 著
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