「部下にたくさん経験させたい」「責任を持たせて成長してほしい」。女性リーダーなら自然にそう考えるでしょう。しかし任せすぎると、部下は優先順位を見失い、成果が散漫になってしまいます。
ここで役立つのが、EOS(Entrepreneurial Operating System®)で繰り返し語られる考え方「Less is More(少ないほど良い)」です。これは単なる言葉ではなく、ツールの設計思想そのものです。
この記事では「Less is More」という視点から、部下に責任を課すポイントを整理します。EOSの代表的なツールである石(Rocks)とスコアカードを例に、責任をシンプルにする方法を解説します。
Less is Moreとは?
言葉の意味と背景
Less is More(少ないほど良い)は、建築やデザインで広まった考え方です。シンプルに削ぎ落としたものほど、本質が際立つという意味で使われています。
EOSでの位置づけ
EOSでもこの思想が繰り返し登場します。代表的なツールは石(Rocks)とスコアカードです。どちらも「少ないほど良い」を前提に設計され、やるべきことを絞り、成果をシンプルに測れるようになっています。
EOSツール | Less is Moreの実践 |
---|---|
石(Rocks) | 四半期ごとに3〜7個に絞り、最優先課題を明確化 |
スコアカード | 毎週チェックする数字を5〜15に絞り、成果をシンプルに把握 |
この仕組みにより、やるべきことが分散しません。成果を生む仕事に集中できるのです。つまり「行動した」で終わらず、成果につながるシンプルなマネジメントが可能になります。
女性リーダーにとっての意味

女性リーダーは責任感が強く「全部やらなければ」と抱え込みがちです。だからこそやることをシンプルにし、成果をシンプルに測るという視点が支えになります。Less is Moreを取り入れることで迷いが減り、チームに安心感を与えつつ成果を積み重ねられます。
石(Rocks)で責任をシンプルにする
女性リーダーの“あるある”は、頼まれごとを断れず抱え込んでしまうことです。その結果、本来の仕事が中途半端になったり、役割外の仕事に時間を取られたりしてストレスが増えます。
石(Rocks)は、四半期ごとに「最優先で取り組むべき3〜7個の課題や目標」を決める仕組みです。やるべきことを絞ることで「これは石だから優先する」「これは石ではないから今はやらない」と判断できます。
この仕組みにより、女性リーダーは余計なタスクを断る勇気を持てます。部下にとっても「今期はこれに集中すればいい」と理解しやすくなり、チーム全体が迷わず進めるのです。
ポイント:石(Rocks)は「やらないことを決める」勇気を与えます。優先順位が明確になり、責任がシンプルに整理されることで、成果を積み重ねやすくなります。
スコアカードで責任を数値化する
仕事の成果は「やったつもり」では測れません。女性リーダーの悩みとして多いのが「責任を課したのに成果が曖昧」というケースです。
スコアカードは、毎週確認する5〜15個の数字を決め、進捗を客観的に把握するEOSツールです。売上やアポイント件数、納期遵守率など、先行指標となる数字を見える化します。
数字での管理は、部下にとっても成果が理解しやすい仕組みです。「この数字を達成することが今週の責任だ」と明確に伝わるため、曖昧さがなくなります。
ポイント:スコアカードは「責任を数値で示す」ツールです。感覚での評価ではなく、数字で共通認識を持つことで部下も納得感を持って動けます。
まとめ|Less is Moreで迷わない責任の課し方
リーダーは「たくさん動くこと」ではなく「成果を生む行動」に集中してほしいと考えます。しかし、行動量と成果が直結しないことも多いものです。だからこそ「行動しただけでは成果は出ない」という前提が必要です。
そのために役立つのが石(Rocks)とスコアカードです。石(Rocks)は「今期これだけは必ずやる」という課題を3〜7個に絞り、部下が迷わず動けるようにします。スコアカードは成果を数字で示し、責任を“見える化”します。つまりやることをシンプルにし、成果をシンプルに測るのです。
Less is More ― 少ないほど良い。この考え方は、責任を課すうえでも強力な武器です。複雑なタスクや曖昧な期待を背負わせるのではなく、やるべきことを絞り、数字で成果を示す。それだけで部下は自信を持って動けます。リーダーも安心して任せられるのです。
メッセージ:女性リーダーに必要なのは「全部やらせる」ことではなく「本当に大事なことだけを任せる」ことです。石(Rocks)でやることを明確にし、スコアカードで成果を数値化する。このシンプルな仕組みこそが部下を育て、リーダーの信頼を高める最短ルートです。
書籍紹介|『TRACTION』
本記事で紹介したLess is More(少ないほど良い)の思想や、石(Rocks)、スコアカードといったEOSツールは、すべて『TRACTION』で体系的に解説されています。
『TRACTION』を通じて、リーダーはやることをシンプルにし、成果をシンプルに測るという視点を学ぶことができます。複雑さに迷うのではなく、仕組みを武器に成果を再現する方法を知りたい方に最適な一冊です。
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ジーノ・ウィックマン 著
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