論点ズレは成果を奪う悲劇——。女性リーダーとして真剣に議論を進めたいのに、気づけば話がすり替わり、責任が曖昧なまま終わってしまうことはありませんか? その背景には、仕組み不足だけでなく「論点をすり替える癖がある人」の存在も関係しています。
そこで役立つのがEOS(起業家型組織運営システム)という仕組みです。EOSのツールを使えば、論点ズレを防ぎ、チームから成果を奪う悲劇を未然に防ぐことができます。本記事では、その中でも課題解決の出発点となる「I(Identify)」を軸に、誠実な議論を守る方法を解説します。
論点ズレが引き起こす悲劇
論点ズレは単なる「話の脱線」ではなく、チーム成果を直撃する深刻な問題です。特に注意やアドバイスをしたときに、本人が悪気なくても「別の論点を持ち出す」「言い訳をする」ことで議論がすり替わってしまうケースは要注意。
これを放置すると、成果が失われ、チームが停滞する悲劇に陥ります。他チームへの責任転嫁が続けば、組織全体からの信用も下がるのです。
論点ズレの症状 | 結果として起きること | EOSツールでの解決策 |
---|---|---|
問題が人間関係の愚痴にすり替わる | 感情論に流れ、建設的な議論にならない | IDSの「I」で真の課題を特定する |
上司や同僚の発言に引っ張られる | 目的を見失い、時間だけが過ぎる | L10ミーティングでフォーマットを守る |
責任が曖昧なまま議論が進む | 「誰もやらない」状態が続く | アカウンタビリティチャートで責任を明確化 |
別の論点にすり替える | 本題が放置され、信頼を失う | 課題リストで優先順位を可視化 |
他人のせいにする | 責任転嫁が蔓延し、成果が出なくなる | 「誰のせい」ではなく「何が原因か」を問い直す |
I(Identify)とは?
I(Identify)は、EOSの課題解決トラック「IDS」の最初のステップです。目的は、根本原因を一行で定義し、全員の合意を得ること。人のせいにしたり、別の論点に話をすり替えるのではなく、事実に基づいた「解くべき本題」を特定します。
IDSの流れと「I」の位置づけ
IDSは、Identify(特定)→Discuss(議論)→Solve(解決)の3ステップで進みます。
「I」がズレると、その後のDやSもすべて空回りします。つまり、論点ズレを防ぐ最大のポイントは、最初のIで本質をつかむことなのです。
I(Identify)の手順
- 事実を確認:スコアカード・現場データで「感じ」ではなく「数字」で見る
- 切り分ける:例外か恒常か、全体か一部かを整理
- 深掘り:「Why?」を繰り返し根本原因を仮説化する
- 一行課題文にする:「どこで・何が・なぜ困っているか」を簡潔に
- 合意をとる:全員が「これが本題」と認めてから次に進む
NG:「誰が悪いか」にフォーカスする/解決案から話し始める/複数の課題を混ぜる
OK:課題は一つに絞る/人ではなく構造やプロセスに焦点を当てる
なぜ「I(Identify)」が重要なのか

「I」が弱いと、論点すり替えや責任転嫁が習慣化してしまいます。特に注意が必要なのは、本人は悪気なくても、論点ズレを繰り返す人。こうしたズレを放置すると、チームの信頼が低下し、成果をあげられなくなる悲劇につながります。女性リーダーは、相手を責めるのではなく、IDSの「I」で本質に立ち返らせる姿勢が求められます。
Iがもたらす効果
- 論点を固定:一行課題文で話題をブレさせない
- 事実基準:「感覚」ではなく「データ」で議論する
- 責任転嫁を防止:「誰のせい」ではなく「何が原因か」に問いを変える
- 信頼回復:論点が正しく定義されれば、議論は誠実さを取り戻す
女性リーダーの誠実さ(愛)×I(Identify)の組み合わせは、論点ズレという“悲劇の芽”を摘み、チームを成果につなげる力となります。
まとめ|論点ズレは成果を奪う悲劇
- 論点ズレは単なる脱線ではなく、チーム成果を直撃する悲劇の引き金となる
- EOSの「I(Identify)」は、課題解決トラックIDSの最初のステップであり、論点のズレを防ぐ要
- 「事実確認」「切り分け」「深掘り」「一行課題文」「合意」という手順で、論点を正しく特定できる
- 「誰のせい」ではなく「何が原因か」に問いを変えることで、責任転嫁を防ぎ、誠実な議論を実現する
- 女性リーダーは、誠実さ(愛)とEOSツールを活かし、論点ズレという悲劇を未然に防ぎ、信頼と成果を守れる
論点ズレを放置すれば、成果を奪う悲劇につながります。だからこそ、EOSの「I(Identify)」を起点に、誠実で構造的な議論を進めることが女性リーダーに求められる役割です。
書籍紹介
『TRACTION』は、EOS(Entrepreneurial Operating System)の公式ガイドブックです。本記事で紹介した「IDS(Identify・Discuss・Solve)」をはじめ、L10ミーティング、石(Rocks)、スコアカードなど、組織の論点ズレを防ぎ成果を奪う悲劇を避けるための仕組みが体系的に解説されています。女性リーダーにとっても、議論を誠実に進め、成果へつなげる強力な武器となる一冊です。
▶『TRACTION』ビジネスの手綱を握りなおす 中小企業のシンプルイノベーション
ジーノ・ウィックマン 著