「弱みを見せたら、信頼を失うのではないか…」
そんな不安から、本音を胸にしまい込んだまま会議を終えた経験はありませんか?
特に、まだまだ男性社会と言える職場で女性がリーダーとして活躍しようとすると、“弱みを見せること=評価を下げること”だと感じやすくなります。結果として、本当に解決すべき課題が共有されず、組織全体の成長スピードが鈍ってしまうのです。
EOS(Entrepreneurial Operating System)では、この壁を乗り越えるために「Be open and honest(オープンで正直)」という価値観を明確に打ち出しています。さらに、L10ミーティング(10点満点ミーティング)やIDSなどの仕組みが、弱みを安心して共有できる環境をつくります。
自分から弱みを見せる勇気が成長の第一歩
言葉で言うのは簡単ですが、実際に弱みを見せることは多くの人にとって難しいものです。その背景には、次のような理由があります。
- 「弱みを見せる=信用を失う」という思い込み
特に少数派の女性リーダーは、自分の立場を守るために弱みを隠しがちです。そのため、本当は助けが必要な場面でも一人で抱え込みやすくなります。 - 失敗への恐れと批判のリスク
「失敗=能力不足」という風土が残る職場では、挑戦や率直な発言が心理的に難しくなります。結果として、現状維持を選びやすくなります。 - オープンマインドが試される場面の多さ
異なる意見や批判を受け入れることは、想像以上にエネルギーを使います。特に会議では、自分の提案に異論が出た瞬間に感情的になりやすい傾向があります。 - 時間的余裕の欠如
日々の業務に追われる中で、自分の課題や弱みに向き合う時間を確保するのは簡単ではありません。優先順位の後回しになりがちです。
『TRACTION』が教える“オープンで正直”の意味
『TRACTION』では、デイビッド・ビスコット博士の著書『自分のベストを引き出す法』から次の言葉を引用しています。
「リスクを取らなければ、成長できない。成長できなければ、最高の自分になれない。最高の自分になれなければ、幸せになれない。幸せになれなければ、他に重要なものなどあろうか?」
この背景には、弱みを隠すことは成長のチャンスを捨てる行為だという考え方があります。
異なる意見や批判を受け止める冷静さ
弱みを見せる勇気と同じくらい重要なのが、他の人からの意見や批判を受け止める力です。ここで感情的になってしまうと、議論が防御的になり、問題解決から遠ざかってしまいます。
特に、会議で自分の提案や行動に異論が出た瞬間、カチンとくる・すぐ言い訳をするという反応は珍しくありません。しかし、こうした場面を冷静に受け止められなければ、リーダーとしての信頼は築けません。
EOSのL10ミーティング(10点満点ミーティング)では、IDS(Identify・Discuss・Solve)というプロセスに沿って議論が進みます。これにより、意見の衝突を個人攻撃ではなく、事実と課題に焦点を当てた建設的な対話へと変えることができます。
適切な受け止め方 | チームへの良い影響 |
---|---|
評価ではなく理解を優先し、背景や事情を丁寧に聞く | 心理的安全性が保たれ、次回以降も率直な発言がしやすくなる |
弱みや失敗を“改善データ”として扱い、原因分析に活かす | 仕組み改善や再発防止の取り組みが進み、成果が安定する |
批判よりも「共有してくれてありがとう」と感謝を伝える | 前向きな文化が根づき、挑戦や発言へのハードルが下がる |
自発的行動と受動的対応の違い
弱みを見せることと、異なる意見や批判を受け止めることは、同じ「オープンマインド」の一部ではありますが、性質の異なる行動です。前者は自分からの発信、後者は相手からの働きかけへの対応です。それぞれで求められるスキルや心構えは異なります。
違いを整理すると、次の表のようになります。
行動タイプ | 性質 | 心理的負荷 | リーダーとしての課題 |
---|---|---|---|
弱みを見せる(自発的) | 自分から発信する行動 | 評価や信頼を失う恐れ | 勇気と自己開示のバランスを取る |
異なる意見・批判を受け止める(受動的) | 相手からの働きかけに応じる行動 | 否定された感情・自己防衛反応 | 冷静さと事実受容の習慣を身につける |
個人の変化がチームを強くする

自分が弱みを出せるようになり、他人の意見を冷静に受け止められるようになると、チーム内の信頼関係が深まります。そして、この信頼関係は課題の早期発見と迅速な解決を促進します。さらに、L10ミーティング(10点満点ミーティング)での議論が活発になり、会議の生産性が格段に向上します。
この連鎖が続くことで、EOSツールは本来の力を発揮します。組織全体がオープンで正直な文化へと進化するのです。その結果、チームも会社も持続的に成長できる体質となり、競争力のある組織へと変わっていきます。
まとめ:弱みは強みの種になる
弱みを見せる勇気と、意見を受け止める冷静さ。この二つは別物ですが、どちらもリーダーに欠かせない資質です。EOSツールを活用すれば、この二つのスキルを組織の習慣として根づかせることができます。
今日のミーティングで、まずは一つ、小さな弱みを共有し、誰かの意見を冷静に受け止めることから始めてみませんか?それがチームを強くする第一歩です。
書籍紹介
『自分のベストを引き出す法』は、デイビッド・ビスコット博士が「リスクを取らなければ、成長できない…」という印象的な言葉を通して、自己成長と自己開示の重要性を説いた一冊です。本記事で紹介した“弱みをさらけ出す勇気”の考え方に直結しています。リーダーとしての姿勢や心構えを深めたい方におすすめです。
『TRACTION』は、EOS(Entrepreneurial Operating System)の公式ガイドブックです。組織運営の6つのコンポーネントをはじめ、L10ミーティング(10点満点ミーティング)やIDSなどのツールを解説しています。これらは本記事で触れた「Be open and honest(オープンで正直)」という文化の背景を理解する助けになります。さらに、組織全体で率直な対話を育てるための仕組みを体系的に学べる一冊です。
▶『TRACTION』ビジネスの手綱を握りなおす 中小企業のシンプルイノベーション
ジーノ・ウィックマン 著