忙しい・問題が山積み・ストレスが絶えない——そんな女性リーダーにこそ効く習慣があります。そこで本稿では、すっきりブレイク(Clarity Break™)を“会議より効く10分”として位置づけ、まず現実的な始め方をまとめます。
まずは前提です。EOS(起業家型組織運営システム)には、忙しい中でも思考を整えるためのツール、すっきりブレイク(Clarity Break)があります。具体的にはPC・スマホをOFFにして、紙とペンだけで自分と向き合う“予約済みの時間”をつくります。週に一度、10〜30分で十分です。たとえばカフェでも自宅でもOK。その結果、頭と心の曇りが取れ、優先順位と「今日の一歩」が見えてきます。
すっきりブレイク(Clarity Break)とは?
すっきりブレイクは、EOS(起業家型組織運営システム)が提案する「自分自身と定期的に向き合う時間」です。つまり、雑音から切り離された思考のメンテナンスのことです。
そのため、会議や業務の合間に“ついでに”考えるのではなく、あらかじめ予定として確保することが前提になります。
そしてPC・スマホをOFFにし、現場から一歩離れて、頭にたまったノイズを静めます。目的はただ一つ、明確さ(clarity)を取り戻すこと。したがって、迷いの少ない判断や、シンプルでブレない指示に直結します。
EOSにおける「位置づけ」
しばしばEOSは「実行の仕組み」だと誤解されます。しかし、実行の質を決めるのは“考える時間”です。ゆえに、すっきりブレイクは石(Rocks)(四半期の重点)やL10ミーティング(10点満点ミーティング)、スコアカードといった実務ツールの“上位”にある、意思決定の源泉です。
このように頭の曇りを取り除くからこそ、会議の議題設定が的確になり、チームの議論も深まります。つまり、すっきりブレイクは贅沢ではなく、経営・マネジメントの基礎体力づくりなのです。
「考える」こと自体がアウトプット
とはいえ、この時間は必ずしも結論やリストをひねり出す場ではありません。むしろ、何も書けない日があってもOKです。心がざわつく日、眠気が強い日、言葉にならない日——それでも椅子に座り、現場から離れて“考えるだけ”で意味があります。
なぜなら、思考の沈殿が起きるからです。感情や断片情報がゆっくり分離し、いつもの景色が少し違って見えるようになります。その結果、次の一手の精度が上がります。
用語解説:思考の沈殿(しこうのちんでん)
定義:入力を止めて静かな時間を持つと、情報や感情が自然に分離し、上澄みとして「いま大切なこと」だけが見えてくる状態。したがって、結論を急がず、ただ“考える”こと自体が価値になる。何も書けない日があってもOK。続けるほど上澄みはクリアになる。
現場を離れる意味
忙しさの中での判断は、しばしば「緊急」に引っ張られます。そこで意図的に現場を離れ、入力を止めることが鍵になります。通知を切り、紙とペンだけを手にすると、思考は自然と重要に回帰します。
もちろん問題はすぐには消えません。しかし、問題の見え方が変わります。視点が上がることで、同じ状況でも「どこから解くか」「何を手放すか」が違ってきます。
軽く、気楽に、まずは続ける
まず完璧を目指さないこと。時間が取れない週は短くても構いません。なぜなら、大切なのは、「考える」ことを自分に許可する習慣そのものだからです。
たとえ短くても、場所がいつもと違っても、うまく集中できなくてもOK。やがて頭と心の曇りは薄まり、優先順位が自然と立ち上がるようになります。会議より先に、自分との約束を一つ守る——だからこそすっきりブレイクは効果的です。
問いが質を決める:おすすめプロンプト集
すっきりブレイクは「考える時間」であって、作業を片付ける時間ではありません。そのためメール・資料作成・事務処理はNGです。EOSの骨格に沿って迷わず使える問いをまとめます。
EOSモデルに沿った基本プロンプト
- ビジョン・トラクションシートの見直し:今、ビジョンなどにズレはないか?もしズレがあるなら何を捨て、どこを絞る?
- Traction|計画・実行:四半期石(Rocks)に対して、では今週のレバーはどこ?
- Data|スコアカード:数字は何を語っている?さらに新たに追うべき1指標は?やめる指標は?
- Issues|課題(IDS):最重要の未解決は何?根本原因は?そして次の一手は「誰が・いつ」?
- Process|プロセス:文書化すべき手順は?とくにボトルネックはどこ?
- People|GWC/LMA:いまの座組で席は適材適所か?一方で任せ切れていない領域は?
迷ったら使う“定番の3問”
- この1週間で最重要の1件は何?(理由は?)
- いまやめるべきことは何?(何を手放す?)
- 私がいま決めるべきことは何?(いつまでに、誰と?)
注意:やってはいけないこと
- まず遅れ気味の仕事を片付けない(メール返信・資料作成・スケジュール調整・チャット対応など作業系は禁止)。
- 次に調べ物のためにスマホやPCを開かない(通知OFF・紙とペンで)。
- 最後にToDoを量産しない(「今日の一歩」1つに限定)。
良いブレイク/もったいないブレイク

観点 | 良いすっきりブレイク | もったいないすっきりブレイク |
---|---|---|
準備 | 毎週同じ時間・場所を予約。PC/スマホの通知はOFFにして外部入力を遮断。 | 空き時間に「ついで」にやる。通知ONのまま着席してしまう。 |
フォーカス | 扱う問いは1〜3個に限定。深掘りは次回へ回す勇気を持つ。 | 気になるテーマを全部触る。途中で調べ物を始めて思考が分散。 |
記録 | 専用ノートに「日付/感情1語/頭のダンプ/上澄み/今日の一歩」を固定フォーマットで記録。 | メモが散在し見返せない。毎回フォーマットが違い、気づきがつながらない。 |
アウトプット | 決めるのは「今日の一歩」1つのみ。必要ならL10やIssuesに1行で転記。 | ToDoを大量作成して疲弊。会議準備や資料作成に脱線してしまう。 |
習慣化 | 10分でも欠かさない。できた日はカレンダーに◎をつけて自己承認。 | 30分取れない日はスキップ。「完璧主義」で頻度が落ちる。 |
感情 | 書けない日があっても「座った自分」を評価。思考の沈殿を受け入れる。 | 成果が薄いと自己否定。すぐに別作業へ逃避しがち。 |
まとめ:10分を“自分に予約”しよう
すっきりブレイクは、空き時間にやるものではありません。だからこそ自分の時間をカレンダーに「予約」する行為が重要です。会議やタスクより先に、毎週同じ枠を確保しましょう。そのうえで通知を切り、紙とペンだけを持って座る——それだけで、実行の質は上がります。
- 先に確保する:毎週同じ曜日・同じ時間に10〜30分を予約。場所もセットで決めておく。
- 習慣化が価値を最大化:続けるほど“思考の沈殿”が進み、良い気づき・ひらめきが増える。結果として優先順位も自然に立ち上がる。
とりわけ忙しい女性リーダーにこそ、この習慣は大きな武器になります。短くていいから、必ず続ける。その積み重ねが、静かな判断力とシンプルな指示を生みます。だからこそ私はすっきりブレイクを強くおすすめします。まずは今、来週分の10分を予約してみてください。
参考書籍『TRACTION』の活用ポイント
『TRACTION』は、EOS(起業家型組織運営システム)の公式ガイドブックです。とくにすっきりブレイク(Clarity Break™)を「考える時間」として定期的に予約し、意思決定の質を上げる重要性が繰り返し説かれています。
場当たり的な対応から抜け出し、静かな判断とシンプルな指示を身につけたい女性リーダーにとって、『TRACTION』は今日から使える具体策の宝庫です。したがって次のミーティングまでに、まずは週10分の“自分予約”から始めてみてください。
▶ 『TRACTION』 ビジネスの手綱を握りなおす 中小企業のシンプルイノベーション
ジーノ・ウィックマン 著